グルジェフ バルゼバブの孫 レビュー

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グルジェフの「ベルゼバブの孫への話―人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判」の読書レビューです。

読書感想文という言い方はなんか子どもっぽいので避けましたw

2冊の比較レビューなのか、それぞれの感想文なのかはどっちとも言えませんが。

グルジェフ誰やねん?って人にちょっとだけ小ネタを紹介すると、identifyingという単語はグルジェフが多用することによって一般語になったと言われています。彼がいなければ、もしかすると「IDカード」というのは違った言葉で広まっていた可能性があります。

ということで本題です。

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2種類の翻訳書が出ている

現在、日本語訳で読めるものは2種類あります。

一つは、浅井雅志訳のもの。こちらでグルジェフの著作を知ったという人が多いはずです。ウスペンスキーの「奇蹟を求めて」の日本語訳もされた方です。そういえば、「生は「私が存在し」て初めて真実となる」の翻訳もされていますが、そこではベルゼバブではなく「ベルゼブブ」としていたような…

基本的な情報は両者の著書からです。2つの本の比較は私見となります。

両方の翻訳書に共通していること

浅井訳、郷訳ともに共通しているのは、「英語から日本語への翻訳」です。グルジェフはこの作品を弟子に口述筆記させていますが、その言語はアルメニア語だったそうです。

アルメニア語からロシア語へ。ロシア語から英語へという流れですので、日本語になる時点ですでに「三重翻訳」となっているわけです。

浅井訳は、1950年の英語版と1973年の英語版がベースと見られます。

郷訳は1950年発行の英語版をベースに、1992年発行の英語版(フランス語の翻訳)を参照。フランス語版はどの言語から翻訳されたのかはわかりません。

両書ともに、訳者のあとがきがあります。当然中身は別です。翻訳者が違うことで、こんなにも日本語が変わってくるのかと、両書を「同じ本であり、別の本」という感覚で読みました。以下に代表的な違いを抜粋してまとめました。

ベルゼバブの孫…各章について

ベルゼバブの孫… タイトル

英語訳:Beelzebub’s tales to his grandson(an objectively impartial criticism of the life of man)

浅井訳:ベルゼバブの孫への話(人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判)
郷訳:ベルゼバブが孫に語った物語(人間の生に対する客観的で公平な批判)

グルジェフの著作3シリーズ

英語訳:All and Everything

浅井訳:森羅万象
郷訳:全体と全て

First Book

浅井訳:第一の書
郷訳:第一巻

第1章 The Arousing of Thought

浅井訳:思考の覚醒
郷訳:思考の喚起

この章では、浅井訳では演説のような口調で、「です・ます調」が中心。郷訳ではいずれの章でも「である」で統一されている。

第2章  Introduction: Why Beelzebub Was in Our Solar System

浅井訳:序:ベルゼバブはなぜ、われわれの太陽系にいたのか
郷訳:ベルゼバブはどうしてわれわれの太陽系に来たのか

第3章 The Cause of the  Delay in the Falling of the Ship Karnak

浅井訳:カルナック号が遅れた原因
郷訳:宇宙船カルナークの落下における遅れの原因

第4章 The Law of Falling

浅井訳:落下の法則
郷訳:落下の法則

第5章 The System of Archangel Hariton

浅井訳:大天使ハリトンの方式
郷訳:ハリトンの発明

第6章 Perpetual Motion

浅井訳:永久運動
郷訳:永久運動

第7章 Becoming Aware of Genuine Being-duty

浅井訳:真の存在義務に目覚める
郷訳:存在に伴う真の義務に目覚めること

第8章 The Impudent Brat Hassein, Beelzebub’s Grandson, Bares to Call Men “Slugs”

浅井訳:ベルゼバブの孫の生意気な小僧ハセイン、人間を<ナメクジ>呼ばわりする
郷訳:なまいきなベルゼバブの孫、ハシィーン、あつかましくも人類を「なめくじども」と呼ぶ

第9章 The Cause of the Genisis of the Moon

浅井訳:月の生成の原因
郷訳:月の生まれた理由

第10章 Why “Men” Are Not Men

浅井訳:なぜ<人間>は人間でないのか
郷訳:なぜ「人間」は人間ではないのか

第11章 A Piquant Trait of the Peculiar Psyche of Contemporary Men

浅井訳:現代人の奇妙な精神が有する実に刺激的な特性
郷訳:現代の人間の奇妙な精神―― その激しやすさ

第12章 The First “Growl”

浅井訳:最初の<うなり声>
郷訳:大騒動のそもそもの原因

第13章 Why in Man’s Reason Fantasy May Be Perceived as Reality

浅井訳:なぜ人間の理性は空想を現実として知覚するのか
郷訳:なぜ人間の理性には夢が現実として映るのか

第14章 The Beginnings of Perspectives Promising Nothing Very Cheerful

浅井訳:全体を概観しつつ話しはじめるが、どうもあまり楽しい話になりそうもない
郷訳:まったくぱっとしない見通しの始まり

第15章 The First Descent of Beelzebub upon the Planet Earth

浅井訳:ベルゼバブ、惑星地球へ初めて降下する
郷訳:ベルゼバブの惑星地球へのはじめての下降

第16章 The Relative Understanding of Time

浅井訳:時間の相対的理解
郷訳:《時間》の相対的理解

第17章 The Arch-absurd: According to the Assertion of Beelzebub, Our Sun Neither Lights nor Hears

浅井訳:恐ろしく馬鹿げたこと: ベルゼバブの主張するところによれば、われわれの太陽は熱も光も発していない
郷訳:大いなる不合理―― ベルゼバブの意見では、われらが太陽は照らさず、熱さず

第18章 The Arch-preposterous

浅井訳:恐ろしく途方もないこと
郷訳:前代未聞の大いなる実験

第19章 Beelzebub’s Tales About His Second Descent on to the Planet Earth

浅井訳:ベルゼバブ、惑星地球への二度目の降下について話す
郷訳:ベルゼバブによる惑星地球への二回目の下降

第20章 The Third Flight of Beelzebub to the Planet Earth

浅井訳:惑星地球へのベルゼバブの三度目の飛行
郷訳:ベルゼバブによる惑星地球への三回目の飛行

第21章 The First Visit of Beelzebub to India

浅井訳:ベルゼバブ、初めてインドを訪ねる
郷訳:ベルゼバブのはじめて のインド訪問

第22章 Beelzebub for the First Time in Tibet

浅井訳:ベルゼバブ、初めてチベットを訪ねる
郷訳:ベルゼバブのはじめてのチベット訪問

第23章 The Fourth Personal Sojourn of Beelzebub on the Planet Earth

浅井訳:ベルゼバブ、惑星地球での四度目の滞在
郷訳:ベルゼバブの惑星地球での四回目の個人的滞在

第24章 Beelzebub’s Flight to the Planet Earth for the Fifth Time

浅井訳:ベルゼバブ、惑星地球での五度目の訪問
郷訳:ベルゼバブの惑星地球への五回目の飛行

第25章 The Very Saintly Ashiata Shiemash, Seen from Above to the Earth

浅井訳:非常に聖なるアシアタ・シーマッシュ、天より地球に遣わされる
郷訳:大聖者アシアタ・シエマッシュ、天より地球に遣わされる

第26章 The Legomisism Concerning the Deliberations of the Very Saintly Ashiata Shiemash Under the Title of “The Terror-of -the-Situation”

浅井訳:非常に聖なるアシアタ・シーマッシュの熟考を伝える「恐るべき現状」と題されたレゴミニズム
郷訳:大聖者アシアタ・シエマッシュの深いお考えを伝える『状況の恐怖』と題され たレゴミニズム

第27章 The Organization for Man’s Existence Created by the Very Saintly Ashiata Shiemash

浅井訳:非常に聖なるアシアタ・シーマッシュ、人間の生存のために組織を創設する
郷訳:大聖者アシアタ・シエマッシュが人間の存続のために設立した団体

第28章 The Chief Culprit in the Destruction of All the Very Saintly Labors of Ashiata Shiemash

浅井訳:アシアタ・シーマッシュの非常に神聖なる仕事がすべて壊滅したことの元凶
郷訳:大聖者アシアタ・シエマッシュの神聖な労働の成果のすべてを破壊した張本人

Second Book

浅井訳:第二の書
郷訳:第二巻

第29章 The fruits of former civilizations and the blossoms of the contemporary

浅井訳:前時代の文明の成果と現代文明の開花
郷訳:過去の文明の果実、ならびに現代の華

第30章 Art

浅井訳:芸術
郷訳:芸術

第31章 The sixth and last sojourn of Beelzebub on the planet Earth

浅井訳:ベルゼバブの六度目の、そして最後の地球滞在
郷訳:ベルゼバブの惑星地球での六回目にして最後の滞在

第32章 Hypnotism

浅井訳:催眠術
郷訳:催眠術

第33章 Beelzebub as professional hypnotist

浅井訳:職業的催眠術師、ベルゼバブ
郷訳:プロの催眠治療師としてのベルゼバブ

第34章 Russia

浅井訳:ロシア
郷訳:ロシア
※ワタシが入手した英語訳では、”Beelzebub in Russia”となっていました。

第35章 A change in the appointed course of falling of the intersystem ship Karnak

浅井訳:宇宙船カルナック、予定のコースを変更する
郷訳:宇宙船カルナークの予定落下路の変更

第36章 Just a wee bit more about the Germans

浅井訳:ドイツ人についてもう一言
郷訳:ドイツ人についてもうひとこと

第37章 France

浅井訳:フランス
郷訳:フランス

第38章 Religion

浅井訳:宗教
郷訳:宗教

第39章 The Holy Planet Purgatory

浅井訳:聖なる惑星<パーガトリー>
郷訳: 聖惑星パーガトリ

Third Book

浅井訳:第三の書
郷訳: 第三巻

第40章 Beelzebub tells how men learned and again forgot about the fundamental cosmic law of Heptaparaparshinokh

浅井訳:ベルゼバブ、人間たちがいかにして根源的宇宙法則ヘプタパラパーシノクを学び、そして再び忘却したかを語る
郷訳: 人々はどのようにして宇宙の根本法則ヘプタパラパルシノクを学び、そして忘れたか

第41章 The Bukharian dervish Hadji Asvatz Troov

浅井訳:ボカラのダーヴィッシュ、ハジ・アスヴァッツ・トローヴ
郷訳: ブハラのダルヴィッシュ、ハッジ・アスバッ・トルーフ
※浅井訳には”Bokharian”とありました。また、ブハラを「ボハラ」と書かれることもあるそうです。

第42章 Beelzebub in America

浅井訳:ベルゼバブ、アメリカに行く
郷訳: アメリカのベルゼバブ

第43章 Beelzebub’s survey of the periodic process of the reciprocal destruction of men, or Beelzebub’s opinion of war

浅井訳:人類が周期的に起こす相互破壊のプロセスに関するベルゼバブの概念、あるいは戦争についてのベルゼバブの見解
郷訳: 人類の周期的相互破壊に関するベルゼバブの調査、 もしくは戦争に関するベルゼバブの意見

第44章 In Beelzebub’s opinion, man’s understanding of justice is in the objective sense an accursed mirage

浅井訳:ベルゼバブの意見によれば、 人間が理解している正義は、客観的意味においては呪うべき迷妄である
郷訳: 人間の理解する正義なるものは、ベルゼバブの意見によれば、 客観的な意味 において、 呪われた幻影にすぎ ない

第45章 In the opinion of Beelzebub, man’s extraction of electricity from Nature, and its destruction during its use, is one of the chief causes of the shortening of human life

浅井訳:ベルゼバブの意見によれば、 人間が自然から電気を抽出し、使うことによってそれを破壊していることが、人間の寿命を縮めている主因の一つである
郷訳: ベルゼバブによれば、人間による自然からの電気の略奪、ならびにその利用 による破壊は、人間の寿命を縮める大きな原因のひとつである

第46章 Beelzebub explains to his grandson the significance of the form and sequence which he chose for expounding the information concerning men

浅井訳:ベルゼバブ、人間に関する情報を伝達するにあたって選んだ形式および順序の重要性について孫に説明する
郷訳: 人間に関する知識を展開するにあたってベルゼバブが採用した形式と順序の重要性についての、ベルゼバブ自身による孫への説明

第47章 The inevitable result of impartial mentation

浅井訳:公平無私なる思考活動から必然的に生じた結果
郷訳: 公正なる精神にふさわしい当然の結末

第48章 From the author

浅井訳:著者より
郷訳: 著者より

訳の違い 単語別

ナスレッディン・ホジャ
浅井訳:ムラー・ナスレッディン(ナスレッディン・ホジャ)
郷訳:ムラ・ナスレディン(ナスレディン・ホジャ)

浅井訳:ティル・オイレンシュピーゲル
郷訳:チル・オイレンシュピーゲル

ティフリス(Tiflis:ジョージアの首都、トビリシ)
浅井訳:ティフリス
郷訳:チフリス

three-brained beings
浅井訳:三脳生物、三センター生物
郷訳:三脳の生き物

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